信号機絡みの片交

信号機絡みの片交(ケース1) ガス工事
信号機絡みの片交(ケース1)

 片交(片側交互通行)は2号警備での交通誘導で、警備員の能力を問われる業務だと思います。
 「交通誘導での誘導灯と手旗」で触れましたが、片交のやり方は人によって癖があり、誘導灯(誘導棒)の振り方がわかりやすい人とわかりにくい人がいます。私から見てわかりにくい振り方は、ドライバーから見てもわかりにくいはず。それではちゃんと誘導していることにはなりませんし、事故が起きる一因になりえます。

 片交は、交互通行可能な2車線道路で、片側の1車線を工事区間として規制する場合に行われます。
 道路の工事区間の左右にひとりずつ警備員が立ち、相互に連携して通行可能な1車線で車両を交互に流します。工事区間の長さは工事の規模によりますが、20メートル前後のガス工事では、工事車両を駐車するスペースを含めると40〜50メートルほどになります。

 道路事情によって片交のやり方は変わります。
 もっともややこしいのは、信号機絡みの片交ですね。その一例を挙げます。

信号機絡みの片交(ケース1)

信号機絡みの片交(ケース1)

 警備員の立ち位置は、車が通行する側になります。警備員(あ)は、左から右に走る車線側で信号機に近い側、警備員(い)は右から左に走る車線側となります。

 四つ角の交差点で信号機があり、交差点のすぐ近くに工事区間がある場合を想定します。上図は、左右の道路が赤信号で、上下の道路が青信号の状態を示しています。
 工事区間と交差点までの距離が短く、(A)の部分に車は3台までしか入れないとします。
 この場合、左右線の信号が赤になったら、警備員(い)は3台を通したら(C)で4台目で止めなくてはなりません。しかしながら、止まるように指示を出しても止まってくれないことはよくあります。ドライバーが行けるだろうと勝手に判断したり、警備員の指示を無視したりするからです。

 また、左右線の交差点の反対側の(F)からも車が来るわけですが、警備員(あ)は(B)で車を止めてはいけません。そこに止めてしまうと、上下線の(D)から左折、(E)から右折してくる車が左右線に入ることができなくなるからです。
 警備員(あ)は交差点の手前の(F)で直進してくる車を止めておきます。(B)まで進入してしまったら、警備員(い)に合図を送り、工事区間を通過させます。

 (F)で止めた車を流すタイミングは、左右線の信号が青になったときです。このとき、(A)に止まっていた3台も青信号で動き出します。
 ただし、(C)で止めている車は動かしません。なぜなら、(F)からの車が工事区間を通るためです。(F)からの車が途切れて、なおかつ青信号であれば(C)の車を流しますが、信号が赤になったら(A)で停車できる3台までしか通せません。
 ここで4台目が制止を振り切ってしまうと、後続の車も前に続けとばかりに止まらないことがあります。制止を振り切られることを「突破された」といいます。

信号機絡みの片交(ケース2)

信号機絡みの片交(ケース2)

 その結果、上図のように交差点手前の停車スペースに入りきらない車が、1車線しかない道路を塞いでしまいます。こうなってしまうと、上下線から入ってくる左折車・右折車が通れず、その数が多くなると、交差点で渋滞が発生してしまいます。
 こうなるのを防ぐために交通誘導しているのですが、突破するドライバーは自分のことしか考えていないので、現場が糞詰まりになってしまうのです。

 もっとやっかいなのは、この糞詰まり状態のときに緊急車両が来た場合です。救急車や消防車が左右線を通りたいのに、突破した車のせいで道路は塞がれてしまいます。
 私自身、そういう場面に遭遇したことがあります。そのときは、たまたま店舗の駐車場が隣接していたので、詰まっていた車をそこに待避させ、緊急車両を通しました。そうした好都合な条件がないときは、いかにして道路を空けるかが難題になります。

 左右線を流すタイミングは、信号が青になったときですが、(F)側と(C)側は、同時には流せません。
 ではどうするかというと、信号が青になるタイミングで、(F)を流しているときは(C)は1回休みで、次に信号が青になったら(C)を流し(F)は1回休み……というように信号が青になるたびに、交互に流すしかありません。
 信号が青の時間は道路事情にもよりますが、最短で15秒、最長120秒だといいます。中を取って60秒だとすると、(F)が60秒流れたあと、上下線が60秒流れ、次に(C)から60秒流し、上下線が60秒流れ、次に(F)が60秒……というように、(F)(C)は次に流れるまで180秒待つことになります。
 これは片交をやってる方も焦れますが、ドライバーはもっと焦れることでしょう。そのため制止を無視する突破が起こりやすくなってしまうのです。

 ただ、ドライバーの人に理解して欲しいのは、これをやるのは事故を未然に防ぐためなのです。強引に突破してしまうと、身勝手なドライバーが事故の原因を作ってしまうのです。
 前にも書きましたが、ガス工事は勝手にやっているわけではありませんし、近隣の住人が安心・安全にガスを使えるようにするためのインフラを支えているのです。
 何のための工事なのか、そのへんにも想像力を働かせてほしいですね。

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