やさしいおばあさん

差し入れしてくれたおばあさん/ベースのイラストはillustAC 作者: moimoi 雑記
差し入れしてくれたおばあさん/ベースのイラストはillustAC 作者: moimoi

 クレーム話を立て続けに書きましたが、今回はちょっといい話。

 工事期間が長く、同じ現場に何度も行っていると、近所の住人の方と顔見知りになったりします。世間話をしたり、こちらが聞いているわけではないのに、身の上話を聞かされたりします。
 話しかけてくるのは、高齢の方が多いです。たぶん、話し相手が欲しいのだと思います。ひとり暮らしだったり、家族と同居していても、話を聞いてくれないのかもしれません。どこか寂しそうな顔をしているから、勝手な想像なのだけど。

 そのおばあさんとも、顔見知りになりました。私がひとりで立っているポジションの前を、たびたび通りかかっていたからです。いつも「ご苦労様」と声をかけてくれていました。朝から夕方まで、ずっと立ち仕事をしているのを見ていたのでしょう。

 ある日、いつものようにおばあさんが通りかかりました。手にはスーパーの袋を持っていました。それを差し出して、こういったのです。
「大変な仕事ね、ご苦労様です。
 差し入れです。食べてちょうだい」と。
 私は驚きました。
「いやいや、受け取れないですよ。お気持ちだけで結構です」
「いいのよ、受け取って。あたしの気持ち」
 おばあさんは笑顔を浮かべながら、スーパーの袋を私に手渡しました。
「無理しないでがんばってね」
 そういって、おばあさんは帰って行きました。

差し入れしてくれたおばあさん/ベースのイラストはillustAC 作者: moimoi

差し入れしてくれたおばあさん/ベースのイラストはillustAC 作者: moimoi

 袋の中には、ポテチ、チョコ、ゼリー飲料、飴などがたくさん入っていました。
 名前も知らないおばあさんからの、突然の差し入れに、ちょっとウルッときました。おばあさんは、私の母くらいの歳です。ふと、しばらく会っていない田舎の母を思い出してしまったのです。
 頂いたものは、現場では食べられませんが、自宅に持ち帰り、妻と分けあって食べました。

 クレーマーに怒鳴られることが多い仕事ですが、ときにはやさしい思いやりのある人もいます。頻度としては、極めて少ないですが。
 そんな人に出会うと、世の中、捨てたものじゃない、と思ったりします。

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